焔の料理人ハティ一人旅ーレカー城塞都市編ー
「ここがライス王国のレカー城塞都市か……。」
ミネルヴァの転移扉から降り立ちつぶやくハティ。
「立て続けに転移してもらったから腹が減ったな。お弁当でも食べるとするか。」
笹でくるんだママル米の握り飯を広げ、木陰に腰をかけるハティ。そこに鎧武者風の人影と謎の車が止まった。
「やや。そなた。それは握り飯ではないか?それがしは少し困っておるのだが握り飯を分けてはくれまいか。」
謎の鎧武者はそう話しかけてきた。握り飯がどうやら必要な様子だった。ハティは気の毒にと思い名乗る。
「俺はハティ。貴方の名は?握り飯が必要なのであれば分けてやる。一体どうした。」
「それがしは玄米五合と申す。車がガス欠でな……。握り飯があれば動くと思ったのだがコンビニが立て続けに閉店しておって困っていたのでござる。」
「は?車が握り飯で動くのか?」
ハティは素直に疑問を口にする。
「ああ。この国の物の原動力は米なのでな。米は全ての原動力なのだ。」
玄米五合は胸を張り自慢げに話す。
「それならば、この握り飯を使うがいい。そうだ。醤油のありかを知らないか?」
「かたじけない。車が動くようになれば醤油の蔵まで乗せていって進ぜよう。」
握り飯を車にほおりこむとブオオオンとエンジンの音が響いた。
「よし。動くぞ。別大陸の米でも大丈夫なようでござる。」
「おお……。」
はじめてみるテクノロジーの結晶にハティは目を輝かせた。
「さあ乗るでござるよ!飛ばすでござる。」
そういってハティは醤油蔵まで送り届けてもらう。
「ありがとう。良い醤油だ。これで俺の目的は達成した。元の大陸へ帰ろうと思う。玄米五合。また会おう。」
「握り飯。感謝する。無事に帰るでござるよ。」
握手を交わし別れの挨拶をする二人。そしてハティは何もない空間に向かって叫んだ。
「ミネルヴァ!全部終わった!クレスダズラに戻してくれ!」
そして何もない空間だったはずの場所に扉が突然現れる。ハティは「またな」といいその扉をくぐると扉自体が消えてしまった。
「おお……。なんと不思議な。しかしこの握り飯のおかげで助かったでござる。」
玄米五合はそうつぶやくと車に乗り込み家へと帰るべくアクセルを吹かした。