野球大会編 第二章 クレス王国にて

 ――大蟹の月15日、クレス王国王宮
「ハロルド閣下。ダズラ王国より野球大会の招待状が届きました。如何なされますか?」
 長いウエーブがかったブロンドを後ろに流し、華奢なサークレットを額に飾った、中年の男。美髪王ハロルドに恰幅の良い大臣がダズラ王国から届いた野球大会の招待状を差し出す。
「ほう。あのスヴァ女王が野球大会を開くと申すか。良い。受けろ。どうせあの女王のことだ。自ら出るに違いない。私も出ることにしよう。」
「国王自らですか。たしかにスヴァ女王は自ら出ると言いそうですな。」
 恰幅の良い大臣は両手を組みうんうんと頷く。
「フギンケニッグ家と黒の蝶にも声をかけておけ。チームは賞金稼ぎをいれとのことだ。最近名が売れている者は居るか?」
 大臣に眼光鋭く良い賞金稼ぎが居ないかと問いかける。
「そうですな……。最近良く名を聞くというと肉喰いのクリエムヒルトと豪腕のヒルデブランドでしょうか。二人とも黒の貴婦人の孤児院出身でございます。」
「ほう。黒の貴婦人の……。あそこはつわものを輩出することで有名だからな。しかし肉喰いとは物騒な名だな。大丈夫なのか?」
「クリエムヒルトは狩った相手のその……。肉を喰うということでついたそうですが……。嘘かまことかは存じ上げます。」
 ぎょっとした様子でハロルド王は眼を開く。
「それはまことか!なんとも物騒ではないか!」
 恰幅の良い大臣はおどおどとした様子で答える。
「嘘かまことかは真実を知るのは……。相方を務める豪腕のヒルデブランドのみでございます。」
 ハロルド王は腕を組み思案する。物騒な人間を入れては事だ。しかし黒の貴婦人を呼ぶということをふと思い立つ。
「そうだ。一つ余興を行おうではないか。黒の貴婦人を呼べば黒の貴婦人の孤児院の者は大人しくなるであろう。それにだな……。ゴニョゴニョ……。」
「それは名案でございます!しかし王よ。そんな下人のようなことを自らして大丈夫なのですか?」
 王は自慢げに口端を上げ笑う。
「私の呼ぶ者は文句は言うまい。開催場所もクレス王国で決めてよいとのことだ。フギンケニッグ領ダグのビフロスト球場で盛大に行おうではないか。」
 大臣は嬉しそうに笑顔を返す。
「おお。こちらの国で開催するというのは良いですな。それに……。ふふふ。楽しみでございます。それでは来客の手配を致しましょう。」
「ああ。任せたぞ。私も息子と野球の練習をしようではないか。」
 そう言い、二人は嬉しそうにとある余興の事を考え笑う。
ダズラ王国のチームに一泡吹かせようという……。とある余興を。

 

 

ミネルヴァがアップをはじめました。