クレスダズラ日誌

PFCS企画のことダラダラ描くよ!

野球大会編5章

――獅子の月2日
 轟音を立てて走る馬車の中、ヴィダルは真っ青な顔で言った。

「ハティ……。ちょっとバケツとって吐きそう……。」

 不思議そうな顔でハティはバケツを差し出す。
ヴィダルは乗り物酔いで激しく気持ち悪くなっていたのだが、ハティはなんともないようだった。

「お前達はなんでさっきから吐いてるんだ?」

 向いの席に座るスヴァ=ローグも真っ青な顔でバケツに吐いていた。

「これほどの揺れとは……。速いが……。速いのだが……。乗り心地は最悪ではないか……。」

「ミネルヴァの奴……。こんなもんよこすなよ……。着く前に死ぬ……。」

 スヴァ=ローグのヴィダルは同時にバケツに向かって嗚咽を漏らす。

「俺は普段から飛ぶから、この程度の揺れは慣れてるんだが……。ヒトは妖怪は大変だな。」

 その姿を見ながらハティはあきれ顔で呟いた。

「そういやあんたに担がれて飛んだ時、お腹ひゅぅっとして気持ち悪かったわ。ウッ。思い出すだけで気持ち悪くなってきた。」

 真っ青な顔をした、ヴィダルとスヴァ=ローグは空を飛ぶ感覚を想像し、再び気持ち悪そうにぐったりとしていた。
10台の従者や選手を乗せた四頭立ての馬車は、順調に爆走していた。
 その時。爆走する先頭の馬車の前に一人の男が居た事も知らず。

 


――同時刻、獅子の月二日
 鍛冶の盛んな南方のニダヴェリールより、一人の鍛冶屋兼剣客が、ダグのビフロスト球場へと向けて歩いていた。

「ミネルヴァ殿に言われてダグまで旅をしているが、ダグまでもう少しでござるな。もうひと踏ん張りでござる。」

 しっかりとした足取りで、トキミツ=ヨンジョウは荷物を背負いながら街道沿いを進んでいた。

「しかし、何故先ほどから地鳴りのような音が聞こえているのでござろう。何かの予兆でござるか?」

 響く地鳴りのような音を聞きながら、トキミツは進んでいた。
丁度、ダズラ方面へと伸びる街道への分かれ道に差し掛かった時、その地鳴りのような音の元凶が飛び出してきた。
 漆黒の、闇に溶けるかのような光る赤い目をした四頭の馬が引く漆黒の馬車の集団が現れたのだ。
御者もなく、異常な速度で迫ってくるその馬車を見たトキミツは蒼白な顔をした。

「なななな!なんでござるかあれは!同じ方向に向かってくるでござる!逃げ……!」

 言葉を最後まで言うまでもなく跳ね飛ばされるトキミツ。

「グフゥ!?」

 見事に空中に飛び、くるくると回転しながらトキミツは跳ねられた。
そしてそのままトキミツは頭から着地し、走り去った馬車の集団を見ることもなく気を失った。

「無……無念。」

 そう呟き、ぼろ雑巾のようにトキミツは転がっていた。


――同時刻。獅子の月二日。

 「ねぇ。さっき窓から人が飛んでいくの見えたんだけど。」

 「我も見えたぞ。もしかして跳ねてしまったのだろうか。生きているのだろうか……。まぁよい。旅人は死んでも仕方のないものだ。」

 真っ青な顔をしたスヴァ=ローグは肩をすくめた。

 「はぁ。そういうもんですか。」

 「そういうものだ。定住せん者まで国は保護できまい。」

 ヴィダルはあきれ顔で言うが、当然とばかりにスヴァ=ローグは言った。
そこにハティは口を挟もうとしたが、スヴァ=ローグに目で威嚇され口をつぐむ。

 「主らも賞金稼ぎであろう?死の付きまとう稼業ではないか。旅というものは自己責任だよ。この大陸はさほど優しいものではないわ。
そのぐらい身に染みて分かっておるであろう?」

 ハティは頷き、言葉を返す。

 「それもそうだな。旅は危険なものだ。仕方ない。」

 想定外の馬車に跳ね飛ばされるという、事故に合ったトキミツをよそに馬車の三人は頷きあい納得した。
そして、轟音を立てながら馬車の集団は二時間ばかり走り、夕日が照らし出した頃、城壁に囲まれた城塞都市が見え始めた。

 「うわー……。本当にダグまで一日で着いた。」

 その間、ヴィダルとスヴァ=ローグは吐きつつも城塞都市へと到着し、馬車が止まったことに安堵した。
城壁の外の受付で執事達が入場の手続きをしている間に、簡単な飲み物を飲んだりして待っていた。
 そして、手続きも終わり馬車も先ほどとは違う、ゆっくりとした足取りで中央に見える一際大きなバロック建築の城へと向かいだした。

「フギンケニッグの娘よ。久しぶりのダグとヴァルホル城を見た感想はどうだ?」

 なにか自慢げにスヴァ=ローグは言う。

「いや、まぁ、すっごい微妙な心境です。相変わらず平和そうでなによりなんですけど……。」

「くく。そのまま連れ戻されないか。か。気にするな。主の身柄はダズラでしばらく引き受けるということにするさ。」

 気さくにスヴァ=ローグは笑うが、ヴィダルは微妙そうな表情をしていた。

「まぁ、それもそうなんですけど。今回の野球大会って、クレス王家も出るんですよね?あいつ……。じゃないシグフルド王子も来るんですか?」

「事前に選手の名簿は交換しない約束だが、おそらく来るだろうな。第一王子であろう?クハハ。主の元婚約者と言ったほうが早いか。」

 そう。ヴィダルの家出の原因は第一王子との婚約の話が出たからであった。
フギンケニッグ家も跡取りが居ないため、渋っていたがヴィダルとシグフルドが幼馴染で仲が良かった。
ということで仕方なく、ムニンレフル家より次男を養子として迎えて収まりをつけようとしていたのだが、実際は仲が良かったわけではなかったのだ。
 貴族一派のガキ大将だったヴィダルが、ひたすらいじめていた相手がシグフルドだったのだ。
いつも一緒に遊んでいたのだが、パシリ扱いの気の弱い文系男子。それがシグフルドだった。
 他の貴族の子供たちは、第一王子だからやめてあげてと言っていたがそんなことも聞かず、ただ何となくパシリにすると面白いというだけでヴィダルはいじめたおしていた。

「さすがに……。いじめていた相手のもとに嫁ぐのはちょっと……。」

 ヴィダルは複雑な顔でそう呟く。

「しかし、第一王子は主のことを好いていて、是非にと指名したようだったが。まぁよい。もうすぐ城につく。休ませてもらおうではないか。」

 開く城門を横目に見ながら、スヴァ=ローグはようやく休めると安堵した表情だった。

「お前第一王子にそんなことしてたのか。ひどい奴だな。」

「うるせぇ!なんか気にくわなかったんだよ!なんでみんなしてアタシの過去の傷をえぐるんだよ!」

 なぜシグフルドが自分を指名したのか全く分からないヴィダルは頭を抱えながら、ゆっくりと走る馬車が止まるを待った。
馬車が止まると、城の扉の前にズラリと並ぶ騎士や執事、メイド達を従えた一人の男が待っていた。
 ヴィダルと同じ燃えるような赤い髪をした、屈強な体躯を持つ、金糸に彩られた黒い服を着た貴族が声を上げた。

「ようこそ!我がヴァルホル城へ!スヴァ=ローグ女王陛下!わしはドラウプニルテュール=グローイ=フギンケニッグ!この地、ダグの領主でございます!」

 ぞろぞろと従者達が馬車より降り、セイ=ロンがヴィダルやスヴァ=ローグの乗る馬車の扉を開けた。
そして、優雅な所作でスヴァ=ローグは馬車より降りるとドラウプニルに近寄り、握手を求めようと手を差し伸べた。

「出迎えご苦労!フギンケニッグ公。今日は主の驚く土産を持ってきたぞ?クハハ。降りてこい!」

 スヴァ=ローグの手を取り、ドラウプニルは握手すると不思議そうな顔をしたのち、驚愕の表情を浮かべ、馬車より降りてくるヴィダルを見て大声をあげた。

「ヴィダル!?なぜダズラの馬車に!?いや、それよりも……。」

 ドラウプニルはヴィダルの後に続き降りてくるハティを見て言葉を続ける。

「なんだその男は!もしかしてお前の婿候補か!?」

 同時にヴィダルとハティは絶叫した。

「「はぁ!?」」

 

 

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トキミツさん。跳ねられる。

スヴァ様とヴィダル車酔い。

ヴィダルとハティ。父に勘違いされる。

の三本でお送りしました。


あとイラストサルベージ色々。

ちょっとサイズ小さいです。

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アルマ=ユマさん。横スリット忘れてる。


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ヴィダルちゃを14歳

昔は髪が長かった。


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スコルとハティ兄弟。

実はハティさん日焼けしてる。


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謎ロボ。

量産型って単眼やんな。ってノリやった気する。


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ちょっとグロい蛾の女王。

拘束具とか好き。


今日はいっぱい更新したよ!