野球大会編 序章
とある昼下がり、ダズラ王国王宮の執務室にてスヴァ=ローグは面倒くさそうに日々の執務をこなしていた。
「ふむ。マデラ橋が大雨で落ちたから新しいのを建てたいと……ええい。この程度の些事を王たる我にまで上げるとはまったく文官は何をしておる。」
苛立ちをはき捨て判を押し次の書類に目を通す。
コンコンとノックの音が部屋に響きスヴァ=ローグはドアに目を向けた。
「お嬢様。お茶のご用意ができました。少々休憩をとられては?」
紅茶と茶菓子の乗ったトレイを持った、体格の良い壮年の執事が休憩を促しに現れた。
「爺か。面倒くさい仕事ばかりで飽き飽きしておったわ。茶を頂こうか。」
額にねじくれた二本の角を持ち、黒い白目を持つ――サターニア種の執事は目を細める。
「全く。お嬢様は国家の主なのですから面倒くさい仕事と言わずにやらねばならぬのですよ。ひとまず休憩にいたしますか。」
この王をお嬢様呼ばわりする執事は、スヴァ=ローグ王直属の特殊部隊“武装執事隊”の隊長を務め、武装執事隊第一席の座に座すセイ=ロンという古強者だった。
前王スヴァ=ロギッチの頃よりスヴァ家に仕え続け、良き参謀として、良き執事として、また良き師としてスヴァ=ローグのサポートをしていた。
ティーポットよりお茶を淹れ、花をかたどった可憐な形の茶菓子をテーブルに並べる。
「ほう。今日は天空茶か。香りが違うな。」
うれしそうにスヴァ=ローグは紅茶を手に取り香りを楽しむ。
「お嬢様は天空茶がお好きでございますからね。お菓子もルラ高地より取り寄せたものです。中に小豆の甘いペーストが入っておりますよ。……それよりもです。何時になったら先日お話になっていたクレス王国との野球大会の招待状を送っても良いのでしょうか?」
「うっ……悪かった。懇意にしている賞金稼ぎらも集めて野球大会をするのであったな。もうクレス王国に送ってよい。日時はそうじゃな、獅子の月3日の休息日でよかろう。スケジュールの調整は任せたぞ。」
ぺこりと頭を下げてセイ=ロンは満足げに微笑んだ。
「野球大会は我々武装執事隊も楽しみにしておりますからね。ヌワラ等は若い頃を思い出すと言ってそれはもう張り切っておりますよ。」
「そうか。ヌワラは若い頃は半神の1番であったな。俊足は衰えてはおらぬだろうな?」
にやりと武装執事隊第二席のヌワラ=エ・リヤを思ってスヴァ=ローグは笑う。元プロ選手が居るというだけで国家同士の野球大会の勝率が上がるからだ。
セイ=ロンも悪そうな笑顔を見せながら返す。
「お嬢様もご存知でしょう。もう150を過ぎたというのにヌワラの素早さといえば、若手も居るというのに武装執事隊随一でございますよ。」
「そうだったな。ヌワラの機敏さは衰えを知らぬな。我が勿論ピッチャーであろうな?」
「そうでございますとも。わたくしはキャッチャーを勤めさせて頂こうと存じます。あとはそうですな。武装執事隊は全員参加の方向でスケジュールを詰めさせようと存じますよ。」
「ほう!全員集まると言うのか。こちらのチームは勝ったも同然ではないか。」
武装執事隊が全員集まるという報告を聞き、スヴァ=ローグは驚きと喜びで声を弾ませた。
「しかしですな……。クレス王国には体力の化け物のフギンケニッグ家と例の孤児院がありますからな。油断なりませぬ。」
「そうか。あの武装集団といわれておる黒の貴婦人の孤児院じゃな……。あそことフギンケニッグ家はまずいな……。」
セイ=ロンは困った様子のスヴァ=ローグを見て嬉々として話を続ける。
「こちらは武装執事と有翼人と、例のフギンケニッグの家出娘がこちらの国で賞金稼ぎ登録をしておりますので呼ぶ予定でございます。ほら。例の赤の魔女と呼ばれている賞金稼ぎでございますよ。」
「おお。そうじゃったか。しかしクレス王国に帰せと向こうから言われかねまい?」
「あのフギンケニッグ家なら放って置くでしょうな。なにせ野蛮人と名高い貴族でございましょう。現頭首のドラウプニル公も若き日は大陸中をほっつき歩いていたそうですし大丈夫でございましょう。我がダズラで賞金稼ぎ登録をしているのなら我がダズラの戦力でございます。」
「頼もしいのう。我も楽しみになってきたわ。そうじゃ。ブルペン練習をせぬか?ボールとグローブを用意せい。」
うきうきとした様子で仕事を放りだしてブルペン練習をしようとするスヴァ=ローグにセイ=ロンはぴしゃりと言う。
「いけませぬ。本日の執務が終わったあとでしたらお相手いたしましょう。」
「爺はいつも厳しいのう……。仕方ない。早く仕事を済ませるから終わったらブルペン練習だぞ?」
渋々ながら仕事に戻るスヴァ=ローグを見てセイ=ロンは微笑む。
「はい。お嬢様。楽しみにお待ちしておりますよ。」
そういってセイ=ロンは部屋を後にした。それを見てニコニコと笑いながら書類に向かい出したスヴァ=ローグはつぶやいた。
「獅子の月三日が楽しみじゃのう。」
久々の更新です!
補足説明ですがクレスダズラ大陸のサターニア種は長命で200歳から250歳近く生きます。肌は皆浅黒く、角の形は家によって違います。
サターニア種が支配階級に多いので武装執事隊はほぼサターニア種で占められています。
あとセイ=ロンさんはこんな感じ。
あと落書き
ゆっくり野球大会書いていこうと思います!
焔の料理人ハティ―調理編ー
「ミネルヴァ。ライスランドの会場へ送ってもらえないか?」
材料を抱えてクレスダズラのミネルヴァの店へと帰ってきたハティ。
その目には何か決意の輝きのようなものが宿っていた。
「いいわよ。私も審査員としていかなきゃいけないし一緒に行きましょう。」
ミネルヴァがそう返すと扉が何もない空中にいきなり現れる。
何もないかのようにミネルヴァはその扉に手をかけ、ハティも後に続く。
――ライスランドホワイトデー会場キッチン
「ここからは調理人と審査員は別々だから私は向こうで待つわね。楽しみにしているわ。」
ミネルヴァがホワイトデー会場のキッチンを後にする。その背を見送った後、ハティは気合を入れるかのように顔をパシッと叩きつぶやく。
「よし。やるぞ。まずは豆の準備からだ。」
チュリグ産の豆を取り出し、リーフィ大陸の水で浸す。
「これで12時間程待つ……。少し寝るか。」
――12時間後
「豆もふやけたな。そしてこの豆をすりこぎで漬け込んだ水ごとすりつぶす……!」
ひたすらすりつぶす作業を繰り返すハティ。
満遍なくすりつぶされた豆をなべを取り出しなべに移し、リーフィ大陸産の水を追加して煮込む。
「これをしばらく煮込んで……と。焦げやすいから注意だな。」
注意深く豆をかき混ぜながら泡の様子が変わるまで煮込み続けていた。
すると、豆乳のよい香りが漂い始めた。
「成功だな。これを布でこしとっておからと豆乳にわけて……と。」
ボウルに布でこしとった豆乳と布に残ったおからを取り分ける。
「そして豆乳を温めなおして……にがりを打ってと。よし。固まってきたな。」
おもむろに容器に上澄みごと移し、つぶやく。
「おぼろ豆腐。完成だ。俺はこれが豆腐の究極の姿だとおもっているんだ。」
「ライスランドの醤油をかけて食うと……。うん。うまい!」
味見をし、満足げにうなずくハティ。
「俺は豆腐が好きだからな。豆腐しかないとおもっていたんだ。あとは審査だな……。どうなることやら。だな。」
なんか割りと普通になりました。
ハティさんは豆腐が好きです。
おぼろ豆腐は私も好きです。
焔の料理人ハティ一人旅ーレカー城塞都市編ー
「ここがライス王国のレカー城塞都市か……。」
ミネルヴァの転移扉から降り立ちつぶやくハティ。
「立て続けに転移してもらったから腹が減ったな。お弁当でも食べるとするか。」
笹でくるんだママル米の握り飯を広げ、木陰に腰をかけるハティ。そこに鎧武者風の人影と謎の車が止まった。
「やや。そなた。それは握り飯ではないか?それがしは少し困っておるのだが握り飯を分けてはくれまいか。」
謎の鎧武者はそう話しかけてきた。握り飯がどうやら必要な様子だった。ハティは気の毒にと思い名乗る。
「俺はハティ。貴方の名は?握り飯が必要なのであれば分けてやる。一体どうした。」
「それがしは玄米五合と申す。車がガス欠でな……。握り飯があれば動くと思ったのだがコンビニが立て続けに閉店しておって困っていたのでござる。」
「は?車が握り飯で動くのか?」
ハティは素直に疑問を口にする。
「ああ。この国の物の原動力は米なのでな。米は全ての原動力なのだ。」
玄米五合は胸を張り自慢げに話す。
「それならば、この握り飯を使うがいい。そうだ。醤油のありかを知らないか?」
「かたじけない。車が動くようになれば醤油の蔵まで乗せていって進ぜよう。」
握り飯を車にほおりこむとブオオオンとエンジンの音が響いた。
「よし。動くぞ。別大陸の米でも大丈夫なようでござる。」
「おお……。」
はじめてみるテクノロジーの結晶にハティは目を輝かせた。
「さあ乗るでござるよ!飛ばすでござる。」
そういってハティは醤油蔵まで送り届けてもらう。
「ありがとう。良い醤油だ。これで俺の目的は達成した。元の大陸へ帰ろうと思う。玄米五合。また会おう。」
「握り飯。感謝する。無事に帰るでござるよ。」
握手を交わし別れの挨拶をする二人。そしてハティは何もない空間に向かって叫んだ。
「ミネルヴァ!全部終わった!クレスダズラに戻してくれ!」
そして何もない空間だったはずの場所に扉が突然現れる。ハティは「またな」といいその扉をくぐると扉自体が消えてしまった。
「おお……。なんと不思議な。しかしこの握り飯のおかげで助かったでござる。」
玄米五合はそうつぶやくと車に乗り込み家へと帰るべくアクセルを吹かした。
焔の料理人ハティ一人旅ーコードティラル編ー
「ここが……。リーフィ大陸のコードティラルか。」
ミネルヴァの転移扉からハティが出てくる。
扉の先に一軒の家が建っていた。そこの扉から老婆が出てきた。
「あれーまぁ。羽の生えた人なんて珍しいわねぇ。」
「貴方がこの農園の管理者か?おいしい水が欲しいのだが分けてはくれないだろうか?」
老婆にハティは用件を告げると、老婆はこくりこくりとうなずきながら返す。
「そうかいそうかい。ここの水はおいしいからねぇ。私はエレジア。貴方のお名前はなんていうのかしら?どこから来たのかね?この辺じゃ見かけない種族だからねぇ……。」
「名乗らぬ無礼を失礼した。俺はハティ。クレスダズラ大陸から来た。有翼人だ。」
エレジア婆はハティにどこから来たのか訪ねると満足そうにこう言った。
「そうだねぇ。魔物が最近出るから退治してくれやしないかね?退治してくれたらお水を分けてあげてもいいねぇ。」
ハティに魔物退治を依頼する。
「任せろ。」
そう言い、魔物が出るという街道沿いに出ると、早速数体魔物が現れた。現れた瞬間、ハティは高速で魔術を詠唱しはじめる。
「漆黒よりもなお暗い、夜よりもなお深い……。煉獄の焔よ!灰燼と帰せ!シャドウフレア!!」
豪。という音と共に影の焔に焼き尽くされた魔物は辺りをガラス質へと変質させながらあっというまに消え去ってしまった。
それにエレジア婆は驚く。
「まぁまぁ。早いわねぇ……!ありがとうねぇ。お水だよ。もってお行き。」
「ありがとう!これであとは醤油だけだ……!」
水を受け取るとハティは何もない空間に声をかける。
「ミネルヴァ!次はライス王国だ!転移させてくれ!」
そして扉が現れハティは扉の先に消えていった。
「あれまぁ……。不思議な子だったねぇ……。」
エレジア婆のつぶやきだけがそこに残った。
すみません!クライドさんとか出そうとおもったんですがうまく書けずにエレジア婆ちゃんだけしかでてません!ごめんなさい!
新キャラといいますか登場人物追加
スヴァ=ローグ
ダズラ王国の女王にしてわがまま大王
暴君にして名君。サターニア以外の妖怪種の地位は低かったが彼女の即位後、彼女の功績により地位が向上した。また、有翼人の奴隷が横行していたがその組織を全て潰し処刑した。有翼人の地位向上にも貢献した。
クレス王国との関係も良好で、クレス王とは茶のみ友達。よくクレス王国にお茶をもって遊びに行っている。
「我は王。スヴァローグなり。我の前に立ちふさがりし愚かな者は全力で排除しよう。」
ミネルヴァの恋人にして初代クレス王の転生した姿。
600年前の英雄王だが女好きにしてすごく時間にルーズ。ミネルヴァは彼を愛したことにより、アルマ=ユマと決別することになった。
初代クレス王の功績な多大な物があるがそのひとつとして人間種の開放。
クレス王国ができるまではクレスダズラ大陸はサターニアの物だった。それを人間種のみの国家を興すために戦った英雄王。もちろんアルガ=ダズラの手助けもあったが。
アルガ=ダズラがミネルヴァとして顕現した際、精霊種に転生させてもらった。
今はミネルヴァの店でつけをためて飲んだくれているダメ男。
弓の腕は確かで百発百中の腕。遠距離からの狙撃を得意とする。
シレス=ルカ
ミネルヴァのキャバクラのNO1キャバ嬢。
サターニアとアルビダのハーフ。
ミネルヴァの孤児院出身。ミネルヴァのことを妄信しており、その力になることを至上の喜びとしている。ミネルヴァの右腕。通称雑用係。
すごく計算高い正確をしている。意外とかわいい物好き。
同期のペトラとはライバルで幼馴染だが意外と仲がいい。休日は一緒に買い物に行くほど。
ペトラ=ロイロイ
万年NO2キャバ嬢
魅惑の瞳を持つサムサールだがお店で瞳全開にしていてもシレスには勝てない。
なぜならシレスがお客さんにプロテクションの魔術をかけているから。
そのことはペトラは知らない。
シレスと幼馴染でミネルヴァの孤児院出身。
いろいろと残念な子だがミネルヴァからの信頼は厚く、VIP対応を任せられている。
おまけ
ペトラの普段着。額隠しは金属製で豪華なタイプになっています。
こんなかんじでにぎやかになってきました!
ホワイトデー焔の料理人ハティさん一人旅―チュリグ編―
「豆だ。豆をくれ。」
チュリグのグリムの元へ、突如ハティが現れた。
「なんですかいきなり。」
「豆が欲しいんだ。究極の大豆だ。ここならあると思って飛ばしてもらった。」
わけのわからないことを口走りながらグリムに詰め寄る。
「豆でしたら栽培していますが……。究極かどうかはしりませんよ。」
「ありがとう!ここで栽培されているものなら大丈夫だ。きっと究極の大豆に違いない。」
グリムは困惑しながらも大豆畑へハティを案内し、大豆を袋にいれて手渡した。
「これが……究極の大豆……!」
「ありがとうグリム!次はリーフィ大陸だ……。開けてくれ!ミネルヴァ!」
その声と共にハティの目の前に扉が現れる。
そして扉が開きハティの姿は掻き消え扉も消え去った。
「なんだったんでしょうかあれは……。」
グリムは微妙な表情で呟いた。
ハティさん一人旅第一弾です!次はリーフィ大陸に水を戴きにに参ります!
リレー小説 春巻のターン! 鬼ヶ島へ
「あっお供っぽいのきてますよ。」
ルーカスが港を指差す。
「我はキングホーンなり!鬼ヶ島へと馳せ参じた!」
なんだか甲虫を思わせる姿の生物はそう名乗る。
「僕はマッド!マッドスネークだよクケケ」
蛇のような生物はそう笑う。
そしてとげとげした不思議な生物は無言だった。
「ねぇ。こいつら斬っていい?」
「ヴィダルさんそれはまずいです。せっかくきてくださったんですから。」
ルーカスが止めに入る。
「とりあえす鬼ヶ島行きの港へ行きましょう。どこだろうなぁ……。」
三匹と二人は鬼ヶ島行きの港を探しに歩く。
そして信じられないものを目にした。
「ねぇ。鬼ヶ島って鬼ばっか住んでるってたしかきいたんだけどさ……。」
ルーカスに同意を求めるヴィダル。
「これは……。一体……。」
そこには、おいでませ鬼ヶ島と書かれた看板が立っていた。
ルーカスは絶句する。
三匹も不思議そうに唸る。
そこに船頭が現われ、こういった
「鬼ヶ島行きかい?乗っていくかい?」
続きは
ロージェイドさん
にて!